特別な場合を考えるー物理得点アップ法その2-

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トップページで触れた物理得点アップ法のひとつ、「特別な場合(特異点)を考える」を解説してみたいと思います。

まず、先日行われた平成26年センター試験物理Ⅰでこの方法を使える問題が出題されていますので、それを例にとります。

第4問Aの問1、解答番号16の問題です。問題は定滑車の左に質量mの物体と質量Mの物体が、右には質量Mの物体がぶらさがっていて、加速度はいくらか、というものです。選択肢は①g、②Mg/(M+m)、③mg/(M+m)、④mg/(2M+m)、⑤Mg/(2M+m)の5つです。まずm=0と仮においてみます。すると、左右の質量が同じ、すなわち重力が同じになるので、加速度0にならないといけません。そこでm=0を各選択肢に代入してみると①g、②g、③0、④0、⑤g/2ですから、この段階で③④に絞れるわけです。またMが無限大ならmは無視でき左右の質量ひいては重力は等しく、やはり加速度0になるはず。M→∞で①g②g③0④0⑤g/2でこれも③④ですね。M=0では、左にmだけですので自由落下。①g②0③g④g⑤0で先ほどの結果とあわせて③か④だとわかりますね。これ以上は、「特別な場合を考える」では絞れませんが、解答する前に絞っておく、あるいは解答してから矛盾がないことを確かめることで、正答率をアップさせることができます(ちなみに正答は④)。知らなかった人は、そんな方法があったのかとちょっと驚きではないでしょうか。

要は、求めた答えが変数を多く含んでいたら、各変数が特別な場合(無限大、0、M=mなど)を考えて、答え合わせにしよう、ということです。とくに答えのなかに同一ディメンションの変数が多く入っている場合と角度の変数が入っている場合に有効なケースが多いです。

他にも例をあげて見ます。

斜面特異点

摩擦のない床のうえに、斜面、その上に物体があります。質量、加速度、垂直抗力、斜面の角度を図のようにおきます。
運動方程式は

max=Nsinθ
may=mg-Ncosθ
MA=Nsinθ

斜面から見た物体の相対運動の角度はθになるので

ay=(A+ax)tanθ

方程式を解くと

ax=Mgsinθcosθ/(M+msin2θ)
ay=(m+M)gsin2θ/(M+msin2θ)
A=mgsinθcosθ/(M+msin2θ)

N=mMgcosθ/(M+msin2θ)

ここで件の特別な点を考えます。

まずθ=0、つまり斜面が水平な板だったらという場合です。

θ=0を各値に代入すると

ax=ay=A=0
N=mg

で、斜面が水平だったら動きませんし、垂直抗力は物体の重力とつりあうはずなので、つじつまがあいます。

次はθ=π/2、斜面が垂直に立っていたらという場合です。

ax=A=0
ay=g
N=0

垂直だったら自由落下になりますので、やはりあっていますね。

さらに斜面が固定されている場合の加速度は、斜面に平行にgsinθです。成分分解しますと水平成分がgsinθcosθ、鉛直成分がgsin2θとなって、M→∞のax,ayと一致します。斜面が固定とM→∞が同等ということに気づかなくてはなりませんが。

どうです、なにか複雑な答えが出てしまって正答かどうか疑わしい、という気持ちが晴れるのではないでしょうか。

次の例。

衝突特異点

図のような正面衝突のはねかえりです。

運動量保存から
mv-MV=-mv’+MV’

はねかえりの式
V’+v’=e(V+v)

(※はねかえりの式はいろいろ覚え方があると思いますが、わたしは「離れる速度が接近する速度のマイナスe倍になる」と言葉で覚えています)

この2式を解いて

V’={(1+e)mv+(em-M)V}/(m+M)
v’={(eM-m)v+(1+e)MV}/(m+M)

です。(m,v)と(M,V)間が対称な衝突ですからv’とV’は(m,v)と(M,V)を入れ替えたら同じ式になることにも注目してください。

で、特別な点です。「M=m,e=1」の場合衝突の前後で物体間で速度を交換するというきまりがあります。これを知らないと使えませんが。代入すると、v’=V、V’=vとなってます。

またe=0では完全非弾性衝突で衝突後、一緒になって運動するというきまりもあります。v’、V’にe=0を代入すると v’=-V’=(MV-mv)/(m+M)になって、あってます(V’とv’の向きの設定が逆なので正負逆になります)。

m→∞、v=0でmは静止した壁と同じですね。壁に垂直にボールを投げ込むとe倍の速さで跳ね返るというきまりがありますから、代入するとV’=eVになって、確かにあってます。

さらに次の例。

特別な場合回路

I1=I2+I3
R2I2=R3I3
E=I1R1+I2R2

これを解いて

I1=(R2+R3)E/(R1R2+R2R3+R3R1)
I2=R3E/(R1R2+R2R3+R3R1)
I3=R2E/(R1R2+R2R3+R3R1)

I2とI3でR2とR3を入れ替えたら同じ式です。
R1が∞なら電流は流れないので、R1→∞でI1=I2=I3=0です。
R2→∞で、R2には電流が流れず、R1とR3が直列ですから、I2=0、I1=I3=E/(R1+R3)となってあってます。
またR2=0ならR3には電流は流れないはずです。実際代入すると、I3=0、I1=I2=E/R1となります。
R2=R3ですとI1が半分ずつR2とR3に流れますから、I1/2=I2=I3となってやはりあってます。

このように、解に同一ディメンションの変数が多く含まれていて、わかりやすい特異点を設定できる場合、答えあわせができます。テストのときにこれを実践すれば、かなり強力な味方となるでしょう。今まで、知らなかった人は是非使ってみてください。物理の得点上昇間違いなしですよ。

「特別な場合(特異点)を考える」、が有効だとわかっていただけたでしょうか

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